「研修の目的を説明する」「研修の趣旨を説明する」。どちらも「何のために行うのか」を伝える場面で使いますが、どう使い分ければよいのでしょうか。
使い分けの目安は、実現したいことに注目するか、取り組みのもとにある考えやねらいに注目するかです。ただし、「趣旨」には目的の意味も含まれるため、二つは明確に分かれる言葉ではありません。
この記事では、「目的」と「趣旨」の意味や使い分けを、研修・イベント・企画書などの身近な例文で解説します。
「目的」と「趣旨」の違いを一言でいうと

- 目的(もくてき):実現しようとすること。行動のめあて。
- 趣旨(しゅし):取り組みのもとにある考えや主なねらい。また、話や文章で伝えようとすること。
たとえば、社内交流会について「部署を越えたつながりをつくる」と説明するなら、交流会の「目的」を示しています。「普段話す機会の少ない社員同士が、気軽に交流できる場にしたい」と説明するなら、開催の「趣旨」を伝えていると捉えられます。
| 目的 | 趣旨 |
|---|---|
| 何を実現したいかに注目する | もとにある考えや主なねらいに注目する |
| 例:部署間の連携を深める | 例:立場を越えて話せる場を設けたい |
| 目的を達成する・目的を定める | 趣旨を説明する・趣旨に賛同する |
ただし、これは使い分けを考えるための整理です。「部署間の連携を深めること」を「開催の趣旨」として示しても自然です。同じ内容を、どちらの言葉で表せる場合もあります。
参考:コトバンク「目的」、コトバンク「趣旨」、漢字ペディア「趣旨」
「目的」とは?

「目的」は、ある行動によって実現しようとすることや、めざす事柄を表します。
「健康を維持するために運動する」なら、健康の維持が目的で、運動はそのための手段です。「何のためにするのか」を考えたときに出てくる、実現したい状態やねらいに当たります。
「目的」を使う場面
- 研修の目的は、新入社員が仕事の基本を身につけることです。
- 利用者の困りごとを把握する目的で、アンケートを実施する。
- 会議を始める前に、今回の目的を共有した。
- 健康維持を目的として、毎朝散歩をしている。
たとえば研修の打ち合わせで「今回の研修の目的を確認しよう」と言えば、受講者に何を身につけてほしいのか、研修を通じて何を実現したいのかを確かめる意味になります。
目的は、必ずしも数値で表す必要はありません。「理解を深める」「安心して暮らせるようにする」といった内容も、目的として表せます。
参考:コトバンク「目的」(デジタル大辞泉)
「趣旨」とは?

「趣旨」には、大きく二つの意味があります。
- 物事を行うもとになっている考えや、主なねらい。
- 話や文章などで、伝えようとしている事柄。
「イベントの趣旨を説明する」なら、どのような考えやねらいで開催するのかを伝えること。「発言の趣旨を確認する」なら、その発言で何を言おうとしているのかを確かめることです。
「趣旨」を使う場面
- 説明会の冒頭で、企画の趣旨を参加者に伝えた。
- 活動の趣旨に賛同し、寄付を申し出た。
- 制度の趣旨を踏まえて、運用方法を検討する。
- 相手の発言の趣旨を確認してから、意見を述べた。
たとえば「初心者も安心して参加できる場にしたい」という趣旨で開く交流会なら、専門用語ばかりの説明や、経験者だけで盛り上がる進行は、その趣旨に合わないと考えられます。
このように「趣旨」は、開催や提案のねらいを説明するだけでなく、進め方がもとの考えに沿っているかを判断する場面でも使えます。
「目的」と「趣旨」の使い分けを例文で比較
研修について説明する場合
例文:今回の研修の目的は、相談対応の基本を身につけることです。
研修を通じて実現したいことを示しています。「受講後にどうなってほしいか」に注目した表現です。
例文:今回の研修は、担当者が一人で悩まず、相談し合える職場をつくりたいという趣旨で企画しました。
研修を企画したもとにある考えやねらいを伝えています。内容や進め方を考える際のよりどころにもなります。
地域イベントを企画する場合
例文:このイベントは、地域の防災意識を高めることを目的としています。
イベントによって実現したいことを示す表現です。
例文:子どもから大人まで、身近な体験を通して防災を考えてもらいたいというのが、開催の趣旨です。
どのような考えでイベントを開くのかを説明しています。家族で参加できる体験コーナーを設けるなど、企画内容につながる考え方です。
なお、「地域の防災意識を高めることが開催の趣旨です」と表しても自然です。二つの言葉は、説明する内容によって重なります。
発言について確認する場合
例文:その発言の目的は、議論を次の段階へ進めることだった。
その発言によって何を実現したかったのかを示しています。
例文:その発言の趣旨は、案を否定するのではなく、条件を整理する必要があるということだった。
その発言で何を伝えようとしたのかを示しています。発言によって実現したいことと、発言で伝えたい内容の違いに注目すると、使い分けがわかりやすくなります。
迷いやすいポイント
「目的=何を」「趣旨=なぜ」と覚えていい?
使い分けの入り口にはなりますが、それだけで区別すると、当てはまらない場面があります。
「なぜ研修をするのか」に対して「仕事の基本を身につけてもらうため」と答えれば、それは目的の説明です。また、「趣旨」も主な目的やねらいを表せます。
目的は実現したいこと、趣旨はもとにある考えや主なねらいに注目するという目安で考え、意味が重なることも押さえておきましょう。
企画書で「目的」と「趣旨」を両方書くときは?
両方の欄がある場合は、同じ説明を繰り返すより、役割を分けると伝わりやすくなります。
- 趣旨:現場で困りごとを抱えている社員が、部署を越えて気軽に相談できる機会を設けたい。
- 目的:社員同士のつながりをつくり、部署間の連携を促進する。
これは企画書を整理する一例で、すべての書類に共通する決まりではありません。提出先の記入例や指定がある場合は、それに合わせましょう。
「趣旨を達成する」は使える?
達成したい事柄を指しているなら意味は伝わります。ただし、実現したかどうかを述べる場面では「目的を達成する」、もとの考えとの一致を述べる場面では「趣旨に沿う」と書くと、伝えたいことが明確になります。
- 研修を通じて、当初の目的を達成できた。
- 研修の趣旨に沿って、少人数で話し合う時間を設けた。
どちらかを一律に誤りとするのではなく、何について述べているかで選ぶのがポイントです。
「目標」「意図」との違い

| 言葉 | 意味・使い方の目安 |
|---|---|
| 目的 | 実現しようとすることや、行動のめあて。 |
| 趣旨 | 取り組みのもとにある考えや主なねらい。また、話や文章で伝えようとすること。 |
| 目標 | 行動を進めるうえで、達成をめざす水準やめあて。 |
| 意図 | 何かをしよう、実現しようとする考えやつもり。 |
たとえば、研修で「安心して相談できる職場にする」が目的なら、「受講後のアンケートで、相談先を答えられる人を90%以上にする」は、その目的に向けた目標の一例です。
「意図」は、「発言の意図」「設計の意図」のように、本人が何をしようと考えているかを表す場面で使えます。「趣旨」と重なる場合もありますが、「趣旨」は話や文章で伝えようとする事柄も表します。
これらの言葉に、常に固定された上下関係があるわけではありません。資料では「何を実現したいか」「どの水準をめざすか」など、項目の役割が伝わるように書きましょう。
まとめ
- 「目的」は、実現しようとすることや行動のめあてを表します。
- 「趣旨」は、取り組みのもとにある考えや主なねらいを表します。
- 「趣旨」には、話や文章で伝えようとする事柄という意味もあります。
- 二つは意味が重なり、同じ内容にどちらも使える場合があります。
迷ったときは、実現したいことを示すなら「目的」、企画のもとにある考えや、話で伝えたいことを説明するなら「趣旨」を目安にすると、選びやすくなります。
参考文献・出典
語義は以下の辞書を参照しました。場面ごとの使い分けは、語義を踏まえて本記事で整理したものです。本文の例文は、本記事のために独自に作成しています。
- コトバンク「目的」(デジタル大辞泉/小学館)
確認した内容:実現をめざす事柄、行動のねらいやめあてという意味。「目標」との用法の違い。 - コトバンク「趣旨」(デジタル大辞泉/小学館)
確認した内容:物事を行うもとにある考えや主なねらい、文章や話で言おうとする事柄という意味。 - 漢字ペディア「趣旨」(公益財団法人 日本漢字能力検定協会)
確認した内容:物事を行う際の主な理由・目的、文章などで伝えようとする中心的な内容という意味。 - コトバンク「目標」(デジタル大辞泉/小学館)
確認した内容:行動にあたって、実現や達成をめざす水準という意味。 - コトバンク「意図」(デジタル大辞泉/小学館)
確認した内容:何かをしようとすること、何かをしようと考えている事柄という意味。
閲覧日:2026年10月25日

