「本の一節を引用する」「記事を別のサイトに転載する」。どちらも、すでにある文章などを使う場面で見かけますが、どう違うのでしょうか。
使い分けの目安は、自分の説明の中で引いて用いるのか、別の媒体に写して載せるのかです。ただし、「短ければ引用」「全文なら転載」と、量だけで決まるわけではありません。
この記事では、「引用」と「転載」の意味や使い分けを、仕事やブログでの例文とともに解説します。似た言葉の「掲載」との違いや、著作物を使うときに気をつけたい点も紹介します。
「引用」と「転載」の違いを一言でいうと

「引用」は、他人の言葉や文章を自分の話や文章の中で引いて用いること。「転載」は、すでにある記事などを写し、別の刊行物やウェブサイトなどに載せることです。
| 引用 | 転載 |
|---|---|
| 自分の説明や論評の中で引いて用いる | 既存の記事などを別の媒体に写して載せる |
| 例:本の一節を示し、その内容について自分の考えを書く | 例:許諾を得て、雑誌の記事を自社サイトに載せる |
たとえば、本について論じる記事で、必要な一節を取り上げて検討するなら「引用」が使いやすいでしょう。一方、雑誌に載ったインタビュー記事を、許諾を得て別のサイトにも載せるなら「転載」です。
なお、これは言葉の使い分けの整理です。「引用」と呼べば、著作権者の許諾なく使えるとは限りません。著作権法上の引用として認められるには、一定の条件を満たす必要があります。
参考:コトバンク「引用」、コトバンク「転載」、文化庁「著作権テキスト」
「引用」とは?

「引用(いんよう)」は、他人の言葉や文章を、自分の話や文章に取り入れて使うことです。
自分の考えのよりどころを示したり、相手の主張を取り上げて論評したりするときに使います。文章だけでなく、会話や発表でも使える言葉です。
「引用」を使う場面
- レポートで、先行研究の一節を引用する。
- スピーチで、作家の言葉を引用する。
- 書評で、小説の一文を引用して表現を論じる。
- ブログで、辞書の説明を引用して言葉の意味を考える。
たとえば、ある筆者の主張について考えるとき、その文章を示すと、何について論じているのかが読み手に伝わりやすくなります。このように、他人の言葉を自分の説明の中で引いて使うのが「引用」です。
ただし、実際に他人の著作物を利用する際は、日常語としての意味とは別に、著作権上の条件も確認しましょう。
参考:コトバンク「引用」
「転載」とは?

「転載(てんさい)」は、印刷物やウェブ上の文章・記事などを写し取り、別の刊行物やウェブサイトなどに載せることです。
もとの媒体に掲載されていた内容を、別の媒体でも読めるようにする場面で使います。文章だけでなく、写真などについても使われます。
「転載」を使う場面
- 許諾を得て、雑誌の記事を自社サイトに転載する。
- 新聞に載ったインタビューを、許諾された範囲で会報に転載する。
- 利用条件を確認したうえで、記事の一部を転載する。
- 写真の転載について、権利者に問い合わせる。
たとえば、自社の取り組みが雑誌で紹介され、その記事を自社サイトにも載せたいとします。このように、掲載済みの記事を別の媒体に写して載せる行為は「転載」と表現できます。
転載は、必ず全文を載せることだけを指すわけではありません。「一部転載」という使い方もあります。
また、「転載」という言葉自体に「無断で使う」という意味はありません。許諾を得た転載もあれば、必要な許諾を得ずに行う無断転載もあります。
参考:コトバンク「転載」
「引用」と「転載」の使い分けを例文で比較
ブログで他人の記事を使う場合
例文:記事の一節を引用し、その主張について自分の考えを書いた。
他人の文章を、自分の論評の中で取り上げています。何を根拠に、どのような考えを述べるのかを示す場面です。
例文:権利者の許諾を得て、記事を自分のブログに転載した。
もとの記事を別の場所でも読めるように載せる場面です。自分の説明の材料として取り上げるか、記事そのものを別の媒体に載せるかに着目すると整理できます。
会社のウェブサイトに載せる場合
例文:業界動向を解説するページで、専門家の発言を引用した。
専門家の発言を取り上げ、それを踏まえて自社の説明を展開する場面です。
例文:雑誌に掲載された対談記事を、許諾された条件に従って自社サイトに転載した。
雑誌の記事を別の媒体にも載せるため、「転載」が使いやすいでしょう。引用・転載のどちらの場合も、実際の利用方法に応じた権利の確認が必要です。
発表やスピーチで使う場合
例文:発表の冒頭で、作家の言葉を引用した。
話の中で他人の言葉を引いて使うため、「引用」が自然です。「転載」は別の刊行物やサイトなどに載せる行為を指すため、言葉を口頭で紹介するだけの場面には通常使いません。
迷いやすいポイント
「一部なら引用、全部なら転載」?
量だけでは分けられません。一部だけを載せる転載もあれば、写真や短い作品などを、その全体を対象として引用できる場合もあります。
大切なのは、使う目的や載せ方です。「短いから引用として問題ない」と判断するのは避けましょう。
出典を書けば、自由に引用・転載できる?
出典の明記だけで、自由に使えるわけではありません。出典を示すことと、利用に必要な条件を満たすことは別です。
文化庁の資料では、引用について、公表済みの著作物であること、公正な慣行に合うこと、引用の目的に照らして正当な範囲であること、出所を明示することが示されています。
具体的には、自分の文章と引用部分を明確に区別し、説明に必要な範囲にとどめ、自分の論述との主従関係を考えることが大切です。
なお、「本文の何%までなら大丈夫」といった一律の数字で判断できるものではありません。
参考:文化庁「著作権テキスト」、文化庁「著作権制度の概要について」
転載には、必ず個別の許諾が必要?
著作権で保護されている他人の記事や写真をサイトなどに載せる場合は、原則として権利者の許諾が必要です。
ただし、利用条件としてあらかじめ転載が認められている場合や、法律上の例外が適用される場合などは、個別の問い合わせなしで利用できることもあります。利用したい内容と方法が、認められた範囲に入るかを確認しましょう。
参考:文化庁「著作権について知っておきたい大切なこと」、文化庁「著作権テキスト」
似た言葉「掲載」との違い

「掲載(けいさい)」は、新聞や雑誌などに文章・写真などを載せることです。ウェブサイトに載せる場合にも使われます。
引用は「自分の説明の中で引いて使うこと」、転載は「既存のものを別の媒体に写して載せること」、掲載は「媒体に載せること」に着目した言葉です。
引用:自分の説明の中で引いて使う
例文:書評で、小説の一文を引用する。
他人の文章を取り上げ、自分の説明や論評につなげています。
転載:既存のものを別の媒体に写して載せる
例文:許諾を得て、雑誌の記事をウェブサイトに転載する。
すでに載っている記事を、別の媒体にも載せています。
掲載:媒体に文章や写真などを載せる
例文:自分で書いたコラムを、会社のウェブサイトに掲載する。
「掲載」は、載せる行為を広く表します。初めて載せる記事にも使えますし、転載した記事を「掲載する」と表現することもできます。
参考:コトバンク「掲載」
まとめ
- 引用は、他人の言葉や文章を、自分の話や文章の中で引いて用いること。
- 転載は、既存の記事などを写し、別の刊行物やウェブサイトなどに載せること。
- 「一部なら引用、全部なら転載」と、量だけで決まるわけではない。
- 出典の明記だけで、自由に利用できるわけではない。
- 掲載は、媒体に文章や写真などを載せることを広く表す。
迷ったときは、自分の説明の中で引いて使うなら「引用」、既存の記事などを別の媒体に写して載せるなら「転載」を目安にすると、言葉を選びやすくなります。実際に利用するときは、言葉の選び方に加えて、引用の条件や利用許諾も確認しましょう。
参考文献・出典
- コトバンク「引用」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典)
確認した内容:読み方、他人の言葉や文章を自分の話や文章の中で引いて用いる意味、説明や論のよりどころとして使う用法。 - コトバンク「転載」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典)
確認した内容:読み方、既存の文章・記事・写真などを別の刊行物やウェブサイトなどに載せる意味。 - コトバンク「掲載」(デジタル大辞泉)
確認した内容:読み方、新聞や雑誌などに文章・写真などを載せる意味。 - 文化庁「著作権テキスト」(令和8年度版、本文75・77ページなど)
確認した内容:著作権法第32条第1項の引用の条件、作品全体を引用できる場合があること、出所の明示と利用許諾の関係。 - 文化庁「著作権制度の概要について」(令和6年度著作権事務担当者講習会、28ページ)
確認した内容:引用の必然性、引用部分の区別、主従関係、必要な分量、利用目的や態様などを考慮する説明。 - 文化庁「著作権について知っておきたい大切なこと」
確認した内容:他人の著作物をインターネット上で公開する場合、原則として権利者の許諾が必要であること。
閲覧日:2026年10月26日
※本文の例文は、辞書の意味を踏まえて独自に作成しています。使い分けの説明には、実際の使用場面に即した整理を含みます。著作権に関する説明は日本の制度を前提とした一般的な整理であり、個別の利用の可否は利用方法や条件によって異なります。

