「記事を転載する」「資料を転用する」。どちらも、すでにあるものを別の場面で使うときに見かける言葉ですが、どう使い分ければよいのでしょうか。
使い分けのポイントは、別の媒体に載せることに着目するのか、目的や用途を変えて使うことに着目するのかです。同じ行為を、両方の言葉で説明できる場合もあります。
この記事では、「転載」と「転用」の意味や使い分けを、記事・写真・資料などの例文とともに解説します。似た言葉の「引用」との違いも紹介します。
「転載」と「転用」の違いを一言でいうと

「転載」は、すでに掲載されている文章や写真などを、別の刊行物やウェブサイトなどに写して載せること。「転用」は、本来とは違う目的や用途で使うことです。
| 転載 | 転用 |
|---|---|
| 別の媒体に写して載せる | 本来とは違う用途で使う |
| どこに載せるかに着目する | 何のために使うかに着目する |
| 例:広報誌の記事をウェブサイトに転載する | 例:商品説明用の資料を研修用に転用する |
たとえば、広報誌に載せた記事をそのままウェブサイトにも載せるなら「転載」です。一方、商品を説明するために作った資料を、新入社員の研修に使うなら「転用」と表現できます。
「転載」は掲載する行為、「転用」は用途を変える行為を表すと考えると、違いを整理しやすくなります。
「転載」とは?

「転載(てんさい)」は、印刷物やウェブ上の文章・記事などを写し取り、別の刊行物やウェブサイトなどに載せることです。写真などを別の媒体に載せる場合にも使います。
もともと掲載されている内容を、別の掲載先へ移して載せる点が中心になります。
「転載」を使う場面
- 著作権者の許諾を得て、新聞の記事を社内報に転載する。
- 広報誌のインタビュー記事を、公式ウェブサイトに転載する。
- 雑誌に掲載した写真を、別の刊行物に転載する。
- 転載先と掲載する範囲を、事前に確認する。
たとえば、広報誌のインタビュー記事を、内容を変えずに公式ウェブサイトにも載せる場合です。紙からウェブへ掲載先が変わっても、元の記事を写して載せるため「転載」と呼べます。
なお、「転載」という言葉自体に、無断で行うという意味はありません。「許諾を得た転載」も「無断転載」もあります。
参考:コトバンク「転載」
「転用」とは?

「転用(てんよう)」は、本来の目的を変えて、別の用途で使うことです。
文章や画像だけでなく、道具・設備・建物などにも使える言葉です。どこに載せるかよりも、使い道が変わることに着目します。
「転用」を使う場面
- 商品説明用の資料を、新入社員の研修用に転用する。
- 撮影用の照明を、作業用の照明に転用する。
- 使わなくなった会議室を、倉庫に転用する。
- 空き瓶を、花瓶として転用する。
たとえば、飲み物が入っていた瓶を花瓶として使う場合です。瓶を別の場所に移したことではなく、飲み物の容器から花を飾る道具へと、用途が変わったことを表します。
資料も同様です。お客様への説明用に作った資料を、社員教育に使う場合は、用途を変えた利用として「転用」と表現できます。
「転載」と「転用」の使い分けを例文で比較
記事や写真を別の場所で使う場合
例文:広報誌の記事を、公式ウェブサイトに転載した。
すでに載っている記事を、別の媒体にも載せる場面です。掲載先が変わることを伝えるため、「転載」が適しています。
例文:広報誌用に撮影した写真を、商品の広告に転用した。
広報誌のために用意した写真を、商品を宣伝する目的で使う場面です。用途の変化に着目するなら「転用」と表現できます。
すでに広報誌に掲載されていた写真を、そのまま広告にも載せる場合は、「転載」と「転用」の両面があります。どちらか一方にしか当てはまらないわけではありません。
仕事の資料を使う場合
例文:公開済みの調査報告書の図を、許諾を得て業界誌に転載した。
報告書に載っていた図を、別の刊行物に写して載せる場面です。
例文:営業担当者向けの説明資料を、採用説明会用に転用した。
社内で営業担当者に説明するための資料を、応募者に会社を紹介するために使う場面です。必要に応じて内容を調整しても、用途を変えて使うという意味で「転用」と表現できます。
身の回りの物を使う場合
例文:使わなくなった収納箱を、植木鉢の台に転用した。
物の使い道を変えているので、「転用」が自然です。「転載」は文章や写真などを載せる場面で使うため、この例では適しません。
迷いやすいポイント
「そのまま使う」が転載、「加工して使う」が転用?
加工するかどうかだけでは分けられません。
「転載」は、元の文章や写真などを写して載せることが基本です。一方、「転用」は用途を変えることなので、加工せずに使う場合もあります。
たとえば、説明資料を一切直さずに研修で使っても、用途が変われば「転用」と表現できます。「加工したから転用」「加工していないから転載」と判断するのは避けましょう。
「転載禁止」と「転用禁止」は同じ?
言葉の意味としては、「転載禁止」は別の媒体に写して載せることを、「転用禁止」は本来とは異なる用途で使うことを禁じる表現です。
ただし、ウェブサイトや素材の利用条件では、禁止する行為を独自に説明している場合があります。見出しの言葉だけで判断せず、規約や許諾の範囲を確認することが大切です。
出典を書けば、自由に転載・転用できる?
出典を書くだけで、自由に使えるようになるわけではありません。
他人の著作物を利用する場合、著作権の保護対象外である場合や、引用などの例外に当たる場合を除き、原則として権利者の許諾が必要です。すでに利用許諾が示されている素材も、その条件に従う必要があります。
「転載」か「転用」かという呼び方と、その利用が認められるかどうかは、分けて考えましょう。
参考:文化庁「他人の著作物を利用したい場合など」、文化庁「文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問」
似た言葉「引用」との違い

「引用(いんよう)」は、他人の言葉や文章などを、自分の話や文章の中に引いて用いることです。
転載:別の媒体に写して載せる
例文:雑誌の記事を、許諾を得てウェブサイトに転載する。
元の記事を別の掲載先にも載せることに着目しています。
転用:別の目的や用途で使う
例文:商品説明用の資料を、社員研修用に転用する。
資料の使い道を変えることに着目しています。
引用:自分の説明の中に引いて用いる
例文:記事の主張を検討するため、該当する一節を引用する。
自分の説明や論評の中で、他人の表現を取り上げる場面です。
なお、著作権法上、許諾を得ずに行える引用には、公表された著作物であること、公正な慣行に合致すること、引用の目的上正当な範囲内であることなどの条件があり、出所の明示も必要です。「短く抜き出せば引用になる」というわけではありません。
参考:コトバンク「引用」、文化庁「文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問」
まとめ
- 転載は、すでに掲載されている文章や写真などを、別の媒体に写して載せること。
- 転用は、本来とは違う目的や用途で使うこと。資料だけでなく、道具や建物などにも使える。
- 掲載先と用途の両方が変わる場合は、転載と転用の両面がある。
- 引用は、自分の説明などの中に他人の言葉や文章を引いて用いること。許諾不要で利用できるかは、条件を満たすかで判断する。
迷ったときは、「別の媒体に載せる」なら転載、「別の用途で使う」なら転用を目安にすると、言葉を選びやすくなります。
参考文献・出典
- コトバンク「転載」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典)
確認した内容:読み方、文章・記事・写真などを別の刊行物やウェブサイトなどに載せる意味。 - コトバンク「転用」(デジタル大辞泉)
確認した内容:読み方、本来の目的を変えて使用する意味。 - 漢字ペディア「転用」(公益財団法人 日本漢字能力検定協会)
確認した内容:本来の目的以外の用途で使う意味。 - コトバンク「引用」(デジタル大辞泉)
確認した内容:読み方、人の言葉や文章を自分の話や文章の中に引いて用いる意味。 - 文化庁「他人の著作物を利用したい場合など」
確認した内容:著作物の利用に当たっての許諾の要否、保護対象や権利制限規定、利用条件等を確認する考え方。 - 文化庁「文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問」(5-⑬)
確認した内容:著作権法上の引用の条件、出所の明示、引用する部分とそれ以外の区別や主従関係についての説明。
閲覧日:2026年10月27日
※本文の例文は、辞書の意味を踏まえて独自に作成しています。使い分けの説明には、実際の使用場面に即した整理を含みます。

