「本の一節を引用する」「詳しくは別紙を参照する」。どちらも、ほかの文章や資料に関わる言葉ですが、どう使い分ければよいのでしょうか。
使い分けのポイントは、言葉や文章を取り入れて使うのか、資料などを照らし合わせて見るのかです。
この記事では、「引用」と「参照」の意味や使い分けを、資料作成や日常の例文とともに解説します。似た言葉の「参考」との違いや、出典を示すときの注意点も紹介します。
「引用」と「参照」の違いを一言でいうと

「引用」は、人の言葉や文章を自分の話や文に取り入れて使うこと。「参照」は、資料などを照らし合わせて参考にすることです。
| 引用 | 参照 |
|---|---|
| 言葉や文章を取り入れて使う | 資料などを照らし合わせて見る |
| 例:本の一節をレポートに示す | 例:本を見て説明の内容を確かめる |
たとえば、本に書かれた一文を自分のレポートに取り入れて論じるなら「引用」です。その本を開いて、説明や用語の意味を確認するなら「参照」といえます。
同じ本を参照したうえで、必要な一節を引用することもあります。二つは、どちらか一方しか使えない関係ではありません。
「引用」とは?

「引用(いんよう)」は、人の言葉や文章を、自分の話や文の中に引いて用いることです。
自分の説明を補強したり、相手の意見について論じたりするために、元の言葉を取り上げる場面で使います。
「引用」を使う場面
- 本の一節を引用して、自分の考えを述べる。
- 専門家の発言を引用して、論点を説明する。
- 論文の記述を引用して、議論を進める。
- メールの一文を引用して、質問に答える。
たとえば、メールで届いた質問の一文を自分の返信に示し、その下に回答を書けば、どの質問に答えているのかが分かりやすくなります。このように、元の文章を自分の文章に取り入れるときに「引用」が使われます。
なお、「引用」という言葉の意味と、著作権法上、許諾を得ずに引用できるかどうかは、分けて考える必要があります。後の「迷いやすいポイント」で、基本的な注意点を紹介します。
参考:コトバンク「引用」
「参照」とは?

「参照(さんしょう)」は、ほかのものと照らし合わせて、参考にすることです。
資料・図表・説明書などを見て、内容を確かめたり理解を深めたりする場面で使います。
「参照」を使う場面
- 説明書を参照しながら、機器を設定する。
- 別紙の図を参照して、全体の流れを確認する。
- 前年の資料を参照して、数値を確かめる。
- 詳しい手順については、マニュアルの10ページを参照する。
たとえば、本文で「詳しくは図1を参照」と書くと、読者に図1を見るよう案内できます。図の内容を本文に取り込むというより、関連する情報のある場所へ目を向けてもらう表現です。
参照先は、外部の本やWebサイトに限りません。同じ資料の別ページや、本文中の図表を参照することもあります。
参考:コトバンク「参照」
「引用」と「参照」の使い分けを例文で比較
本を使ってレポートを書く場合
例文:本の一節を引用して、著者の主張について論じた。
本の文章を、自分のレポートの中に取り入れる場面です。元の言葉を示して説明や議論に用いるので、「引用」が合います。
例文:本の該当ページを参照して、用語の意味を確認した。
本を見て、内容を確かめる場面です。その文章をレポートに載せることまでは表していません。
会議資料を作る場合
例文:公開された報告書の記述を引用して、課題を説明した。
報告書の言葉を資料に取り入れ、その記述を使って説明する場面です。
例文:過去の会議資料を参照して、これまでの経緯を確認した。
以前の資料を見ながら、情報を確かめる場面です。元の資料を確認する行為に着目しています。
相手に資料を見てもらう場合
例文:詳しい手順は、添付のマニュアルをご参照ください。
相手にマニュアルを見て確認してもらいたいので、「参照」が自然です。
「ご引用ください」とすると、マニュアルの言葉や文章を取り入れて使ってほしいという意味になります。見て確かめてほしいなら「参照」、取り入れて使ってほしいなら「引用」と考えると、依頼の意図を伝えやすくなります。
迷いやすいポイント
「引用」は、文章をそのまま写すことだけ?
原文をそのまま示す方法は、引用の分かりやすい例です。ただし、学術的な文章では、他者の考えを自分の言葉で要約して示す方法を「間接引用」と呼ぶこともあります。
そのため、「少し言い換えたから引用ではない」「参照と書けば出典はいらない」とは考えず、他者の考えや記述に基づく部分は、その出所が分かるように示しましょう。論文やレポートでは、提出先の執筆要領にも合わせます。
出典を書けば、自由に引用できる?
出典を記載するだけで、どのような利用も認められるわけではありません。
文化庁の「著作権テキスト」では、許諾を得ずに引用できる条件として、公表済みの著作物であること、公正な慣行に合うこと、引用の目的に照らして正当な範囲であることなどを挙げています。引用部分を区別することや、本文との関係、必要な分量、出所の明示にも注意が必要です。
「引用」と書いたかどうかだけでなく、実際にどのように使っているかが大切です。
参考:文化庁「著作権テキスト(令和8年度版)」(本文75ページ)
「参照」と書けば、文章や画像を載せてもよい?
「参照」は、資料などを照らし合わせて見ることを表す言葉です。他者の文章や画像を載せるための許可を意味するものではありません。
元の文章や画像を自分の資料に掲載するなら、引用として認められる使い方か、利用許諾や利用条件に基づいて使えるかなどを確認します。「参照」という表記だけで、利用の可否が決まるわけではありません。
似た言葉「参考」との違い

「参考(さんこう)」は、ほかの人の意見や事例、資料などを、自分の考えを決める手がかりにすることです。また、そのための材料も指します。
引用:言葉や文章を取り入れて使う
例文:先輩の言葉を引用して、スピーチをした。
先輩が話した言葉を、自分のスピーチの中で取り上げています。
参照:資料などを照らし合わせて見る
例文:前回の進行表を参照して、当日の流れを確認した。
進行表という具体的な資料を見て、内容を確かめています。
参考:考えや判断の手がかりにする
例文:先輩の意見を参考にして、スピーチの構成を考えた。
意見を判断材料として役立てています。言葉をそのまま取り入れるとは限りません。
「参照」と「参考」は意味が重なりますが、使い分けの目安としては、具体的な資料を見る行為なら「参照」、考えや判断に役立てることなら「参考」と整理できます。
まとめ
- 引用は、人の言葉や文章を自分の話や文に取り入れて使うこと。
- 参照は、資料などを照らし合わせて参考にすること。
- 参考は、意見や事例などを自分の考えや判断の手がかりにすること。
- 出典の記載や「参照」という表記だけで、他者の著作物を自由に使えるわけではない。
迷ったときは、「取り入れて使う」なら引用、「照らし合わせて見る」なら参照を目安にすると、場面に合う言葉を選びやすくなります。
参考文献・出典
- コトバンク「引用」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典)
確認した内容:読み方、人の言葉や文章を自分の話や文の中に引いて用いる意味、説明や論の補強に用いること。 - コトバンク「参照」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典)
確認した内容:読み方、ほかのものと照らし合わせて参考にする意味。 - コトバンク「参考」(デジタル大辞泉)
確認した内容:読み方、意見や事例・資料などを自分の考えを決める手がかりにする意味。 - 文化庁「著作権テキスト(令和8年度版)」(本文75ページ「引用」)
確認した内容:公表済みの著作物を引用して利用する際の条件、公正な慣行、引用の目的上の正当な範囲、出所の明示。 - 東京大学附属図書館「レポート・論文作成支援」
確認した内容:直接引用と間接引用、出典の明示、著者名・タイトル・ページ番号などの記載、提出先のルールを確認すること。
閲覧日:2026年10月26日
※本文の例文は、辞書の意味を踏まえて独自に作成しています。使い分けの説明には、実際の使用場面に即した整理を含みます。

